解剖学者の生態
| 鍋のなかの解剖学 著者:藤田 恒夫 |
解剖学者というものは好奇心が旺盛らしい。アンコウ鍋ひとつとってみても、食べ物としてだけではなく、解剖学の対象として考え、盛り上がる。自分の研究対象について興味が尽きない。対象はカエルやウシだけではなく、ミトコンドリアや細胞核まで行き着く。
小腸は脳の指令を受けず、独自に働くというコメントが興味深い。確かに眠ったら心臓が止まるとか、栄養の吸収をしなくなる、などという話は聞いたことがない。脳から独立した「小さな脳」と呼ばれるそうな。
学者としてお世話になった恩師についての項は、師匠のあり方について考える際に興味深い。学生をほとんど放任していた人。こまめに様子を聞き、指示を出し、面倒を見た人。さまざまなタイプがいることを知ることができる。どちらも筆者にとって大きな存在であったことは間違いない。最近では後者のほうが評価されるだろうが。
いまどきの研究室とは異なる風景が展開されているかもしれない。これも「古きよき時代」という一言で片付けてしまってよいものか。ある学者のエッセイ集から、学問とは何か。研究のあり方とはなにか、など読者の関心に応じて何かを感じ取って欲しい。冒頭のエッセイに目をくらまされることなく、読み進めていただきたい本です。(☆☆)


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